池長 未来 / 言語聴覚士 ルート訪問看護ステーション西宮。大阪の専門学校卒業後、回復期病院に8年間勤務。結婚・出産・離婚を経て、シングルマザーとして子育てと仕事を両立させながら2023年にルートへ転職。西宮市内を中心に嚥下障害・失語症・認知症の方への訪問リハビリを担当している。
この記事の内容

まず、言語聴覚士を目指したきっかけを教えてください。
もともとは音楽をずっとやっていていました。中学と高校の6年間、吹奏楽部でホルンを吹いていたんです。プロになりたいって本気で思っていたぐらい好きで、もうそれだけに明け暮れていました。
高校3年生の時点で、進路は決まっていなかったんですか?
そうなんです。音楽の道に進みたいけれど、どうしようかと悩んでいた時期に、親戚が脳梗塞で倒れて、失語症になってしまったんです。言葉が出なくなった姿を初めて見て、すごくショックでした。そのとき、母が「見学に行ってみたら?」と病院のリハビリの場に連れて行ってくれたんです。
そこで何を感じたんですか?
率直にビックリしました。あれだけ言葉が出なかった親戚が、リハビリの場では声をかけながら、ちゃんとコミュニケーションをとれているんです。「こうすれば、できるんや」って。なんかもう、ビビッてきて。「この仕事をしたい」って速攻で決めました。音楽のプロになる夢もその瞬間に切り替わって、言語聴覚士の道に進むって。迷いはほぼなかったですね。
ちなみに中高6年間の吹奏楽部、どんな部員だったんですか?
今でこそこうやって笑顔で喋っていますけど、当時は本当に怖かったってよく言われていて(笑)。音楽に集中していたので、ふざけてる子がいたら許せないタイプでした。本気オーラ全開だったみたいで、よく後輩には怖がられてました。
厳しい一面があったんですね。
そうなんです。3年生になったとき、副部長に選ばれました。部長が優しいタイプの子だったので、自分が厳しい役を担おうと思ったんです。挨拶ができてない子にはこちらから声をかけたり、敬語を使わない子には注意したり。今振り返ると、ちょっとやり過ぎたなって思いますけど(笑)。
今の自分に生きていることはありますか?
反面教師にはなってますね(笑)。あの頃の自分に一言伝えられるなら、「もっと大きい心で生きろ」って言いたいです。でも一方で、諦めない精神は鍛えられました。ここで逃げたら終わりやっていう感覚は、あの経験で培われたと思っています。

専門学校を卒業してから、最初の職場はどこだったんですか?
最後の実習先が大阪の病院で、その時にお世話になった先輩が「就職しない?」と誘ってくれたんです。自分にとってすごくあこがれる人で、思ったことをズバズバ言うような裏表のない方だったんですよ。嫌なことはハッキリ口にするし、ダメなことはダメってはっきり言える。気持ちいいな、この人と一緒に働きたいってすぐに思って就職を決めました。
通勤は大変じゃなかったですか?
毎日2時間かけて通ってましたね。当時は若かったし、仕事が楽しかったので何とかなっていたんですけど(笑)。その病院では8年間お世話になり、結婚も出産も離婚も全部経験しました。今振り返っても、人にも本当に恵まれた職場でした。今でも感謝しています。
8年勤めた職場を離れようと思ったのはなぜですか?
子どもが小学校に上がるタイミングだったんです。当時、私はシングルマザーとして子どもを2人育てていました。朝5時半に家を出て、2時間かけて通って働くという生活が、とてもじゃないけど続けられなかった。子どもをちゃんと育てながら、自分もリハビリの仕事を続けたかった。その両方を諦めたくなかったんです。
訪問看護を選んだのはなぜでしょう?
働くなら在宅のリハビリがしたいと決めていました。病院でのリハビリも好きでしたけど、自宅に帰った後って、なかなか支援が届きにくいじゃないですか。そこに関わりたいという気持ちがずっとあって、訪問の職場を探し始めました。
いくつか候補はあったんですか?
3つほど候補がありました。でも最初にルート訪問看護ステーションで面接を受けたときに、ここで働くと決めました。決め手は木下社長の熱意です。「西宮に根ざしたまちづくりがしたい」という話を聞いて、あ、ちゃんとしたビジョンを持ってやってる人たちなんだって思って。またビビッときたんですよね。一度決めたら、すぐに行動するタイプなので、もうここしかないってなりました。

木下一平代表取締役
現在の仕事内容を教えてください。
言語聴覚士として訪問でのリハビリをしています。一番多いのは嚥下障害の方への支援で、次に失語症の方、認知症の方という順ですね。
嚥下障害というと、飲み込みの支援ですか?
そうです。病院に入院していたときに「限られたものしか食べられません」と言われて退院してきた方が多かったんです。でも家に帰ってきたら、やっぱり食べたいじゃないですか。「奥さんの作った料理が食べたい」「行きつけのお蕎麦屋さんのそばが食べたい」って、みなさん具体的に想いを持っていらっしゃったんです。その目標に向かって、一緒にどうしたら食べられるかを考えていくようにしています。
病院との大きな違いはどこですか?
病院だと、どうしても「安全第一」が優先されて、先生の指示の範囲でしか動けない部分がある。たとえば、とろみを外したい利用者さんがいても、「それは責任が取れません」となったら、そこで止まってしまう。でも自宅に帰ってきたら、担当医の先生から「安全な範囲ならトライしていいよ」と言っていただけることが多いんです。だから、病院の評価ではとろみが必要なレベルの方でも、先生と相談しながら少しずつとろみを減らすこともあります。
その判断をするときは怖くないですか?
常に悩んでいます(笑)。嚥下の評価をしていても、食べていいかどうかの判断が絶妙に難しい方もいらっしゃる。でも食べたいっておっしゃる。そういう時は、「このままだと難しいから、こんな工夫をしましょう」ってお話しして、なんとかその方の望む形に近づけるように考えます。正解はなくて、その方に合わせたオーダーメイドの支援を大切にしています。
最近、やりがいを感じた瞬間はありましたか?
失語症の方のお話をしていいですか。50代の方で、介入し始めた頃は、しゃべろうとしてもすぐ「もういいわ」って諦めてしまっていたんですね。それでも1年近く訪問してきて、だんだんと言葉を出そうと努力するようになったんです。今ではうまく伝わらなくても何とか伝えようとしてくださるようになりました。しかも復職を目指して行動されるようになったんです。もうめちゃめちゃ嬉しかったですね。
失語症の方との関わりは、どんなことが難しいですか?
特にブローカー失語という、頭の中で言いたいことは分かっているのに言葉にならないタイプの方は、悲観的になりやすくて。言葉の意味は理解できるし、言いたいことも分かっている。でも言葉が出てこない、そのもどかしさは想像するだけで苦しくなります。
ついつい代弁したくなりませんか?
なりますなります(笑)。「これを言いたいんですよね?」って言いたくてたまらなくなるんですよ。でも、それをあえて言わないという選択が大事だと分かっていて。ただ、ストレスがかなり高い方には「私が言うから大丈夫」と代わりに伝えることもあります。状況によって判断しています。
利用者さんと関わる上で大切にしていることは何ですか?
「楽しく」ということに一番重きを置いています。とにかく笑顔になれる時間をつくることが第一です。障害を受け容れられずにマイナスな気持ちでいる方でも、私が訪問している時間だけでも、一緒に笑いましょうって。前向きな雰囲気を作ることでリハビリに取り組む意欲も湧いてきます。そしてリハビリでできることが増えたら一緒に喜ぶようにしています。特に失語症の方が何か言葉を発せられたら、私はかなり過剰に反応してると思います(笑)。嬉しくて、自然に声が出ちゃうんですよね。

今後、ルート訪問看護ステーションでやっていきたいことはありますか?
まず昇格を目指したいというのがあって。それと、言語聴覚士の領域を広げていきたいんです。今は主に嚥下・失語・認知症を担当していますが、聴覚障害の方への支援もやっていきたいと考えています。手話を習いに行ったり、聴覚支援の団体とのつながりを作り始めたり、補聴器の勉強をしたりと、少しずつ動いています。
聴覚障害の方への支援をしたいのはなぜですか?
訪問で聴覚障害を見ている言語聴覚士って、ほとんどいないんですよ。もしかしたら1人もいないんじゃないかってぐらい。だとしたら、自分がそこをやれたら、ルートの強みにもなるし、困っている人の力になれる。そう思ったら、やりがいを感じます。
5年後のビジョンを聞かせてください。
「言語聴覚士といえばルート」って思ってもらえるくらいにしたいです。大きい話に聞こえるかもしれないけれど、そこに向かって本気で動いています。誇りを持って働くことは、仕事の質を上げてくれると思うので。
シングルマザーとして、子育てとキャリアを両立させてきた経験も大きいですよね。
子どもがいるからキャリアを諦めるという選択もあったと思うんですけど、私はそうしたくなかった。ルートは、私のような選択を後押ししてくれる職場だと感じています。女性でも、子育てしながらでも、キャリアアップできるって、自分自身が見せていけたらと思っています。諦めなければ、できることってやっぱりあるんだなって、今はそう思えています。

最後に、転職を考えている言語聴覚士や看護師の方に向けて、メッセージをお願いします。
病院でのリハビリも、もちろんすごく大事です。でも、病院を出た後の生活に関われるのが訪問の仕事で、そこには病院ではたどり着けなかった景色があると感じています。「自分でそれを食べたい」「その言葉を伝えたい」という利用者さんの本音に向き合えるのが訪問の醍醐味です。
ルート訪問看護ステーションに来てよかったと思うことは何ですか?
外部の交流会や研修にも積極的に参加させてもらえるし、自分でやりたいと思ったことを後押ししてもらえる。言語聴覚士が現在5名いて、チームとして動けることも本当に心強い。何より、ここで働く人たちが悪口や愚痴で時間を潰すような雰囲気じゃなくて、みんなで高め合おうとしているのがわかる。それが一番の居心地のよさかもしれません。
どんな人に来てほしいですか?
何か目的を持っている人と一緒に働きたいですね。和気あいあいとしたい、というよりも、一つの方向に向かって本気になれる人。あとは、子育てしながらでも仕事でしっかり力を発揮したいというお母さんたちにもぜひ来てほしいです。そういう人たちが輝ける場所として、もっと育てていけたらと思っています。
「訪問って興味があるけど、私にできるかな」と不安な方へ一言あるとしたら?
病院での経験がある分だけ、必ず貢献できることがあります。時には目の前の課題に悩み続けることもありますが、ここには一緒に考えてくれる仲間がいます。もっと患者さんと密に関わりたいという気持ちのある方はぜひ一度、話を聞きに来てみてください。
「訪問看護・リハビリが気になる。でも、自分に合っているのかな?」
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