この記事は、こんな方に読んでいただきたい内容です。
・リエイブルメント事業に興味がある介護事業者の方
・利用者さんにどんなサービスを紹介すればいいか悩んでいるケアマネジャーの方
・訪問診療や訪問リハビリを行っている医療職の方
前回の記事では、リエイブルメントという考え方をご紹介しました。
▼振り返り
リエイブルメントとは 3ヶ月・週1回・全12回のプログラムで、本人の「やりたいこと」に着目。自分で再びできるようになるための「セルフマネジメントスキル」を身につけ、介護サービスを必要としない自立した生活を目指します。 実際に取り組んだ地域では、利用者の約7割が3ヶ月後に介護サービスなしの生活に戻ることができた事例もある。
読んでくださった方からこんな疑問の声が届きそうですね。
「全体像はわかった。で、実際には何をやってるの?」
今回は、その疑問に正面から答えます。西宮市のリエイブルメントモデル事業でONE flatが実際に行っているプログラムの中身を利用開始の流れから卒業まで全部お見せします。
前回に続き、西宮市でリエイブルメント事業を担当しているONE flatの戸梶さんに、新人スタッフが聞いていきます。
戸梶さん、そもそも利用者さんって、どうやってこのプログラムに辿り着くんですか?チラシを見て自分で申し込む、みたいな感じですか?
実はそこが一般的なサービスと違うところで、必ずアセスメント訪問から始まるんよ。
リエイブルメントのプログラムは、本人が直接申し込んで始まるサービスではありません。入口になるのは、地域包括支援センターのケアマネジャーさんからの相談です。
対象になるのは、要支援1・2の認定を受けている方、または事業対象者(介護保険の認定は受けていないが、基本チェックリストで支援が必要と判断された方)。「最近足元がおぼつかない」「これからデイサービスの利用を検討したい」「生活機能を維持・向上させたい」など前回ご紹介したような方について、ケアマネジャーさんから声がかかるところから話が始まります。
紹介があったら、すぐ利用開始、ではありません。その前に必ず行うのがアセスメント訪問です。
地域包括支援センターのケアマネジャーさんと、ONEflatの医療職が一緒にご本人のもとを訪問し、体の状態や生活の様子を評価して、「この方は本当にリエイブルメントの対象か」を見極めます。
え、せっかく紹介してもらったのに、対象じゃないってこともあるんですか?
あるよ。たとえば痛みが強い方に無理にリエイブルメントを勧めても、本人がしんどいだけやから。その場合は、訪問看護でリハビリを受ける、デイサービスに行くなどその人に合った別の介護保険サービスを提案して、そっちに繋ぐんよ。
自社のサービスに来てもらうことではなく、その人に合った次の一歩に繋ぐことがアセスメント訪問のゴールです。この入口の見極めがあるからこそ、プログラムを始めた方が3ヶ月やり切れる、という側面もあります。
ONE flatでは、利用開始のタイミングをクラスごとにずらして設定しています。
水曜クラス: 月初スタート
木曜クラス: 第3週スタート
開始時期を2つに分けている理由は、申し込みから利用開始までの待ち時間をできるだけ短くするためです。早ければ、アセスメント訪問のあった週のうちに始まった事例もあります。
一方で、「寒い時期は避けて、暖かくなってから始めたい」というご本人の希望で、1月に評価をして3月から始めた方もいます。開始時期は、ご本人の体調や生活に合わせて柔軟に決めています。

12回って聞くと結構長い気がするんですけど、毎回同じことをやるんですか?
それがちゃんと設計されてるんよ。12回のうち、どの回で何をやるかが最初から決まってる。ざっくり言うと『測って、鍛えて、また測る』を3ヶ月かけてやるイメージ。
全12回のプログラムは、あらかじめ設計されています。まず土台となるのが、3回の体力測定です。
つまり、12回のプログラムは自然と前期(1〜4回)・中期(5〜10回)・後期(11〜12回)に分かれます。初回の測定で現状を知り、中間の測定で「やれば変わる」ことを本人が実感し、最終測定で成果を確かめて卒業に向かうという流れ自体が、利用者さんの意欲を支える仕掛けになっています。
体力測定って、何を測るんですか?握力とか?
モデル事業で測ってるのは2つ。どっちも椅子ひとつあればできるシンプルなテストなんよ。
体力測定の項目は、次の2つです。
CS-30(30秒椅子立ち上がりテスト)
30秒間で椅子から何回立ち上がれるかを数えるテスト。足の筋力の指標になります。
TUG(Timed Up & Go テスト)
椅子から立ち上がり、3メートル先のコーンを回って、再び着席するまでの時間を測るテスト。歩く力とバランス、転倒のしやすさの指標になります。
どちらも特別な機械のいらないシンプルなテストです。だからこそ利用者さん自身が「前より回数が増えた」「タイムが縮んだ」と、自分の変化をその場で実感できます。この数字で見える手応えが、中期のモチベーションを支えます。

測定の間の回には、体を動かすだけでなく、生活全体を立て直すための講話・プログラムが組み込まれています。テーマは大きく4つです。
| テーマ | 実施回 | ねらい |
|---|---|---|
| 社会参加(グループワーク) | 2・6・10回目 | 卒業後に地域とつながる出口をつくる |
| 口腔機能向上プログラム | 3・7・9回目 | 食べる・飲み込む・話す力を保つ(西宮いきいき体操・口腔版) |
| 栄養改善 | 4・8回目 | 筋力を取り戻すための食事を学ぶ |
| 自立支援 | 12回目 | 卒業後の生活への橋渡し |
そして最終回の12回目には、修了式があります。
修了式まであるんですね(笑)。ほんとに卒業なんだ。
そう。3ヶ月やり切ったことをちゃんと本人と一緒に確認して送り出す。ここを適当にやらないのが大事なんです。
運動・口腔・栄養・社会参加という4本柱は、厚生労働省が介護予防で重視している要素とそのまま重なります。体だけを鍛えるのではなく、生活全体を立て直すというリエイブルメントのプログラム設計の考え方が、この12回の並びに表れています。
じゃあ、実際の1回のセッションって、どんな流れなんですか?
よくぞ聞いてくれました。うちの2時間、全部見せます。
ONE flatのプログラムは、週1回・2時間(9:30〜11:30)で行っています。会場は、西宮市苦楽園のホーミーリハビリデイサービス苦楽園。ある日の流れはこうです。
| 時間 | 内容 | 何のためにやるのか |
|---|---|---|
| 9:30〜9:40(10分) | 導入・バイタルチェック・体調確認 | その日の体調で無理をさせないため。安全にプログラムを行う準備。 |
| 9:40〜10:00(20分) | 回ごとのプログラム(体力測定/講話/口腔プログラム) | 先ほど紹介したその回のテーマを行う時間。 |
| 10:00〜10:40(40分) | 西宮いきいき体操 | 西宮市が推進する介護予防体操。卒業後も地域の体操グループで続けられる。 |
| 10:40〜11:20(40分) | 個別プログラム・面談・自主トレ指導 | 一人ひとりの目標に合わせた運動と意欲を支える個別面談。自宅で続ける自主トレの指導もここで行う。 |
| 11:20〜11:30(10分) | 連絡事項・体調確認 | 運動後の体調を確認し、次回・自宅での取り組みにつなげる。 |
なお、ご自宅とデイサービスの移動は、こちらで車送迎をしています。通いの手段がないことが参加のハードルにならないようにしています。
この2時間で注目していただきたいのは、後半の40分です。
全体で同じ体操をする時間とは別に、毎回、専門職(理学療法士・作業療法士)による個別の時間が確保されています。ここでは、その人の目標に合わせた個別プログラムに加えて、面談と自主トレ指導を行います。
自主トレってことは、ここに通う週1回以外の時間も関係あるんですか?
むしろそっちが本番。週1回・2時間だけで体は変わらないんよ。残りの6日間、家で何をするか。それを設計して、続けられるように支えるのがこの時間。
3ヶ月で生活を取り戻すためのカギは、実は通っていない6日間にあります。毎回の個別面談と自主トレ指導は、その6日間を設計するための時間です。
この個別面談で実際にどんな問いかけをしているのか、利用者さんのやる気がどう変わっていくのかは、次回・第3回の記事で詳しくお伝えします。

12回終わったら、全員が自動的に卒業なんですか?
そう。うちは延長なしの12回ポッキリ。全員が12回で卒業します。
えっ、じゃあ3ヶ月で思うように良くならなかった人はどうなるんですか?
そこで大事になるのが、終わる前にもう一回行くアセスメント訪問なんよ。
現状、リエイブルメントのプログラムに延長はありません。全員が12回で修了します。
だからこそ重要になるのが、出口の見極めです。プログラムの終了前に、ケアマネジャーさんと一緒に、もう一度アセスメント訪問を行います。入口のときと同じようにご本人の状態を評価したうえで、出口は大きく2つに分かれます。
① 元の生活を取り戻し、地域での暮らしを継続する
プログラムを通じて身についた運動習慣やセルフマネジメント力を活かし、料理、買い物、掃除といった家庭での役割や、余暇・趣味活動、西宮いきいき体操、地域の通いの場、公民館活動などの社会参加につなげます。これにより、専門職による継続的な支援を必要としない、自分らしい生活を目指します。
② 次のサービスに繋ぐ
何かしらの支援を続けた方がよいと専門職が判断した場合は、デイサービスや訪問看護など、その人に合ったサービスを提案して繋ぎます。
つまりこの事業に、卒業できなかったという状態はありません。3ヶ月の成果とご本人の状態に合わせて、全員が次の生活へ送り出されます。
卒業後は、ONE flatがフォローを続けるわけではありません。担当のケアマネジャーさんが、3ヶ月に1回のアセスメント訪問でご本人の様子を確認していきます。
卒業したら終わり、じゃなくて、ちゃんと見守りが続くんですね。
そう。しかもそれを僕らが囲い込むんじゃなくて、地域のケアマネさんに戻すのがポイント。もし状態が変わったら、そこからまた必要なサービスに繋がれるからね。
事業所が利用者さんを抱え込まず、地域のケアマネジメントの仕組みに戻す。また通ってもらうことが利益になる従来型の構造とは逆向きのリエイブルメントらしい設計です。
そして大切なのは、卒業そのものはゴールではないということです。
ゴールはあくまで、専門職による継続的な支援がなくても、家庭での役割や趣味、地域の活動を含めた自分らしい生活を送れるようになること。卒業はそのスタートラインです。だからこそ、12回目の講話テーマは自立支援を扱い、卒業後の生活への橋渡しに充てられています。社会参加のグループワークを3回も組み込んでいるのも、卒業後に地域の体操グループや活動につながる出口をプログラムの中からつくっておくためです。

ここまで聞くと、結構な手間がかかってますよね。どういう体制でやってるんですか?
そこは正直、簡単ではない(笑)。でも、だからこそ体制の話は同業の方に一番伝えたいところなんです。
このプログラムは、西宮市のリエイブルメントモデル事業(短期集中予防サービス)として、ONE flatが市から受託して運営しています。
体制の概要は次のとおりです。
定員:利用者の定員数は事業所によって異なります。ONE flatは水曜クラス6名・木曜クラス6名で運営しています。
スタッフ配置:行政の人員配置基準で、利用者8人以下の場合はリハビリ専門職(理学療法士・作業療法士)1人+介助する者(資格は問わないが、福祉業務等の経験がある者)1人と定められています。
送迎:あり(ご自宅と会場の間を送迎します)
利用者の費用負担:なし
1クラス6名という少人数は、毎回40分の個別の時間(個別プログラム・面談・自主トレ指導)をきちんと確保するための前提でもあります。
西宮市のモデル事業は複数の法人が受託していますが、ONEflatはそのうち唯一の非法人医療系の民間企業です。
医療機関でも社会福祉法人でもない民間企業が、専門職を確保し、行政と連携しながら介護予防の中核事業を担う。この形は、これからリエイブルメント事業への参入を考える事業者の方にとって、一つの参考になるはずです。

今日はタイムテーブルまで、ほんとに全部見せちゃいましたね。
実はこのプログラム、西宮市から指定されている標準プログラムなんよ。うちが勝手に作ったものでも、勝手に変えられるものでもない。だから同じモデル事業なら、枠組みはどの事業所も基本同じなんです。
え、じゃあどこで受けても同じってことですか?
枠組みはね。でも正直、同じプログラムでも結果は同じにはならない。差がつくのは毎回の個別面談。あの40分の質で、3ヶ月後が全然変わるんよ。
今回は、西宮市リエイブルメントモデル事業のプログラムを、利用開始から卒業まで通してご紹介しました。
入口はケアマネさんと専門職によるアセスメント訪問。本当に対象かを見極め、合わない方は別のサービスに繋ぐ。
12回は3回の体力測定(CS-30・TUG)を骨組みに、運動・口腔・栄養・社会参加の4本柱で設計されている。
毎回の2時間には、必ず専門職による個別の時間(個別プログラム・面談・自主トレ指導)がある。
延長なしの12回で全員が修了。出口は修了前のアセスメント訪問で見極め、卒業後はケアマネさんの定期訪問に引き継ぐ。
卒業はゴールではなく、目標の生活を実現させるためのスタートライン。
このプログラムの枠組みは、西宮市から指定された共通のものです。ただ、同じ枠組みで運営しても、利用者さんの「もう一度やってみよう」という気持ちを引き出せるかどうかで、結果は大きく変わります。
その分かれ目になるのが、毎回の個別面談です。
次回(第3回)は、この個別面談の中身に踏み込みます。ONE flatの専門職が実際にどんな問いかけをしているのか、「どうせもう無理」と言っていた方の気持ちがどう変わっていくのか。リエイブルメントの一番のコアを、現場の視点でお伝えします。
この記事は、西宮市よりリエイブルメントモデル事業を受託している株式会社ONE flatが、現場の経験をもとに作成しています。